スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

昭和戦前古建築散歩 ふりだしに戻るの巻

学生時代、桑原甲子雄の『東京昭和十一年』という写真集を買った。

あの時代、わたしは都市のノスタルジアにとりつかれていたし、桑原甲子雄はどうやら、かつてのわが家のすぐ近くの住民だったらしい。父親が暮らしていた界隈の風物がこの写真集には記録されていた。

桑原甲子雄 東京昭和十一年 函

いや、わが家は戦争中に焼け出され、山手線の円環の外にあった曾祖父の隠居所に移ったので、わたしはこの家のことをまったく知らない。いつか、あのへんを歩いて、家があったあたりをおまえに見せてやろうと、亡父はずっといっていた。さらにいえば、祖母ならば、桑原甲子雄の質店を知っていたかもしれない。もういまさらどうにもならないが。

桑原甲子雄 東京1934-1993
桑原甲子雄『東京1934-1993』(新潮社、1994年) 集大成ともいえる写真集で、『東京昭和十一年』に収録された写真の多くが再録されている。たまたま知り合いに著者と親しい人がいたので、この本を託し、桑原さんのサインをいただいた。そうなるともう開けないので、閲覧用にもう一冊手に入れた!

それより少し前、高校三年のときに、黒い化粧箱、臙脂のクロース装の江戸川乱歩全集を買い、同時期に、『虚無への供物』が収録された、武満徹装幀の『中井英夫作品集』や、三一書房の『久生十蘭全集』も買った。さらにいうと、桃源社から復刻された松野一夫の挿絵入り『黒死館殺人事件』やら、『夢野久作全集』やらと、戦前の「新青年」に縁のある作家たちの作品を片端から集め、読んでいた。

新しいものを好まず、はるか昔の事物を知ることに喜びを感じる、なんとも変な高校生だった。タイムマシンがあるなら、東京オリンピック以前に戻り、テレビで見た鈴木清順の『探偵事務所23 くたばれ悪党ども』のロケ地を歩いてみたいと思っていた。

しかし、若くてものを知らないというのは、やはりどうにもならないものだ。これだけの下地がありながら、わたしが長いあいだ気づいていなかった「都市の記憶」がすぐ目の前にあった。それを知ったのは、松山巌の『乱歩と東京』によってのことだった。

松山巌 乱歩と東京

この本のなにに愕いたといって、乱歩が描いた東京にあった建物が、まだあちこちに残っているということである。たとえば、『怪人二十面相』の第一巻は、昭和11年に執筆された。昭和11年ぐらいなら、この本を読んだ1984年には、ずいぶんたくさん現存していたのである。

江戸川乱歩 怪人二十面相表1

江戸川乱歩 怪人二十面相表2
江戸川乱歩『怪人二十面相』 昭和12年刊の元版(講談社)を復刻したものの表紙(上)と裏表紙。表1も味があるが、表2はさらにいい。

松山巌は、乱歩の作品を社会地理学的に読み解きながら、そうした戦前の建物のすがたをわれわれに提示した。かくて、「まだそこにある昭和11年」をわたしも見てみようと思った。(この項つづく)




怪人二十面相―少年探偵 (ポプラ文庫クラシック)
江戸川 乱歩
ポプラ社
売り上げランキング: 47729
スポンサーサイト

テーマ : 戦前の建築 - ジャンル : その他

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
プロフィール

Good Times

Author:Good Times

カウンター
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク
このブログをリンクに追加する
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。