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昭和戦前古建築散歩 恐るべき昭和モダンの尖端性 千代田ハイツ(両国)

というタイトルで、この建物、千代田ハイツのファサードの写真を見たら、たいていの人は拍子抜けしてしまうだろう。

chiyoda heights

多少とも近代建築の知識のある人でも、やはり、ファサードだけでは「どこが面白いの?」というのではないだろうか。

だが、このアパートメント・ハウスが竣工したのは1935年だ、といえば、あの時代の建物を知っている方なら「それはすごい!」と、のけぞるとはいわないまでも、もう一度、ファサードのデザインをためつすがめつされるだろう。

なぜためつすがめつするかといえば、1935年竣工では、いくらなんでもこのデザインは未来を先取りしすぎていると感じる建築ファンが多いはずだからだ。1960年竣工といっても、たいていの人が騙されるのではないかと思う。ざっと見積もって四半世紀ほど早く建ってしまったアパートなのだ。

chiyoda heights
側面。こういうディテールを見れば、昔の建築材料が使われていることがわかる。壁面にはスクラッチ・タイルが貼り付けられているし、窓枠はスティール・サッシュだ。ダスト・シュートというのも最近は見ないが、これは戦後の建物、とくに集合住宅にはよくあった。

たしかに、20世紀に入ってからの建築思潮というのは、装飾排除の方向にむかっていた。そのあらわれが表現派や分離派であったり、 ル・コルビュジエであったり、そして、最後に勝利することになるインターナショナル様式だった。

だから、戦前にこのような建物が建っても、たとえば村野藤吾の近三ビル(森五商店)のような例もあることだし、大騒ぎするほどではないかもしれない。でも、はじめてこの建物を見たときは、やはり聞きしにまさる突出ぶりに愕いた。竣工時には、通りがかる人がみなギョッとするほどの未来的建築だったのではないだろうか。

chiyoda heights
入口の周囲をめぐるこのモンドリアン・パターンがじつに魅力的だった。こういうところは、やはり戦前の建物だということを感じさせるが、でも、1935年にあっては、これはウルトラ・モダンだっただろう。

chiyoda heights
この玄関ホールのデザインもすばらしい。ほんとうはなかまで入って観察したかったが、オフィス・ビルではなく、集合住宅なので、遠慮してしまった。

chiyoda heights
両国橋から側面を見た。この両国橋の飾りも面白い意匠だ。これはまだあるので、いつでも観察できる。

タイトルに「両国」と書いたが、正確には向こう両国、東両国、両国橋を渡った墨田区側に、この千代田ハイツはあった。

反対側の西両国は米沢町で生まれ育った小林信彦は、長編小説『Yesterday Once More』の主要な舞台として、このアパートメント・ハウスを利用した。ジャック・フィニーがかつて『ふりだしに戻る』で、ダコタ・ハウス(射殺されたとき、ジョン・レノンはここに住んでいて、すぐ前の歩道で事件は起きた)をタイム・マシンとして利用したように、小林信彦もこの建物を使って主人公を昭和30年代へと飛ばした。

kobayashi nobuhiko yesterday once more cover
小林信彦『イエスタデイ・ワンス・モア』(新潮社刊)

jack finney time and again
ジャック・フィニー『ふりだしに戻る』(角川書店刊)

00jack finney from time to time
Jack Finney "From Time to Time"(『ふりだしに戻る』の続編)

dakota apartment
ダコタ・ハウス。こちらは19世紀の建築。

この建物の尖鋭性にはなにかそういう雰囲気がある。まるで、未来からやってきた人間が、かつて自分が暮らしていた時代にはありふれていたデザインを、なにげなく適用したかのようなのだ。

『日本近代建築総覧』は、コード・ナンバー17270を割り当てたこの建物について、竣工は昭和10年としたが、構造は不明、設計、施工者も不明として、空欄にした。

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