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隣の猫町 (上)

前回は萩原朔太郎が『猫町』で描いた、認知の錯誤のことを書いた。本日は、つい最近、わたしが迷いこんでしまった猫町の話。

すでに何度かふれたように、わが住む町は高低差に富み、道が入り組んで、すぐ近所にすら、足を踏み入れたことのない場所がたくさんある。

散歩ブログなどというものをはじめた以上、この複雑怪奇なア・ヘル・オヴ・ロング・アンド・ワインディング・ローズの隅々まで踏破しなくてはいけないと一念発起し、いままでは用がないからと行かなかったところでも、ずんずん入っていき、無遠慮にシャッターを切っている。

わが町の特徴は、平地がほとんどないため、まっすぐな道もほとんどない、ということに尽きる。水平に曲がりくねり、垂直にアップ・ダウンするのが当たり前なのだ。

わが家から15分ほどのところに、丘のあいだの谷間を、海際から山へとダラダラあがっていく道がある。この両側は複雑怪奇なうえに、べつに用事もないので、とりわけ道の北側にはほとんど入ったことがなかった。となれば、入ってみるしかない!

nekomachi ryakuzu1

おそろしくヘタな地図でどうも失礼。これはじっさいの道を描いたというより、「脳内ブロック配置図」というべきもので、あくまでも、この脇道に入りこんでいったときの、わたしの主観にすぎない。こういう位置関係だと思って歩いていったのだ。

wafuu shitamiita no ie

古びた家の写真などを撮りながら、数分も行くと、向こうに踏み切りが見えた。皆様にはなんの意味もないが、わたしはビックリした。こんなところを電車が走っているとは思わなかったのだ。上記の略図をご覧あれ。線路にはぶつからない道なのだ。いや、そのはずだったのだ。

nekomachi fumikiri1

小津安二郎の『麦秋』の終盤、散歩に出かけた菅井一郎が、遮断機に行く手を遮られ、まるで人生に敗れたように道ばたに腰を下ろしてしまう、あの印象的なシーンと同じような感覚、といっては大げさだが、わたしはありえない線路にぶつかって、ショックを感じた。

nekomachi fumikiri bangoya
踏切番小屋などという古風なものがあったが、もう使われていない様子だった。この写真を撮った直後に、番小屋誕生の背景を知ることになった。

わけがわからないまま、めったに乗らないJRが、ここを通っている可能性に思い当たった。このあたりで私鉄とJRが山のなかのどこかで立体交差しているはずだった。それで納得したところに、ちょうどカンカンカンカンと鳴りだしたので、列車が通るのを待って写真を撮ることにした。

ところが、どういうわけか、やってきた車輌は私鉄のものだった! また混迷に陥ったわたしは、遮断機が上がり、車がいなくなったところで、踏切の真ん中に立って、トンネルの向こうにレンズを向けた。

nekomachi tonari no eki

駅が見えたが、あの駅がどこなのか、混乱したわたしには、それすら判断できなかった。このあたりは、駅間が極度に短く、思わぬショートカットを通って、もうひとつ向こうの駅まで行ってしまったのかとすら思った。それなら、予想外のところを線路が通っていたことも納得できる。

写真を撮っていたら、また遮断機がおりはじめたので、あわてて線路外に出たら、通りかかった老婦人(というより老婆という言葉のほうがふさわしかったが)が大げさな身振りで、「おお、こわ」と、足を踏み入れかけて引き返し、写真を撮ろうとカメラを構えたわたしと並んだ。そして、「昔、ここで子どもが二人、電車にはねられてね」などと話しはじめたのである!

nekomachi fumikiri hantaigawa
この写真を撮っているときに、フレームの左側外にいる老婆から、昔の痛ましい事故の話をきいた。いや、心霊写真などではないので、気になさらないように。

ただでさえ、狐に化かされたような割り切れなさに困惑しているところに、なにやら不気味な雰囲気を漂わせる見知らぬ老婆に、この場所で死んだ子どもたちの話など聞かされて、わたしは「猫町かよ」と身震いした。

山間の道はすでに明るさを失いはじめていた。なにやら現実感が溶けて流れだすような、フワフワと頼りない気分になってきた。(つづく)
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